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株式会社フィードフォース

初夏の昼下がり、オフィスにわざわざ来ていただいて取材をさせていただいた。僕の尊敬する塚田社長。笑顔がとっても似合う社長だ。情報をうまくビジネスにしているフィードフォース社の社長はどんな夢を語ってくれるのだろうか。
 

受託開発からサービス提供企業へ

丹下:会社概要から教えて頂けますか?

塚田:もともとの成り立ちから説明すると、最初はルートコミュニケーションズという会社を立ち上げました。そちらも代表としてやっているんですが、今は一緒に立ち上げた人に任せて、フィードフォースを主にやっています。もともとルートをやっているときに、ルートはいわゆる受託制作の会社で、それ自体は仕事としては面白い仕事なんですけれども、ビジネスモデルとして見たときに、大きくするんだったらそれなりの覚悟が必要なんだっていう事を常に何年も考えていました。それだったらそうじゃなくてサービスでスケールするようなものをやりたいなというのを考えていました。そしてルートの一事業部としてそういうサービスを企画するような事業部を立ち上げて、そこで3年くらい前、2005年に、まだRSSとかがちょっとだけ認知度が上がってきたタイミングで、このRSSとかFeedっていうものを使って何かを作ったら面白いのではないかという考えで、いまのフィードフォースのサービスの一つであるRSS Suiteを開発しました。

丹下:なるほど。最初から事業になると思って立ち上げられたんですか?

塚田:実際ものができて、いろいろ調べていくうちにかなりこれは面白い領域だってことを改めて実感して、本気でやりたいなと思い別会社にしました。それがフィードフォースの出発点、成り立ちです。で、そういう経緯もあってルートのほうは受託開発、フィードフォースのほうは自分達が考えたサービスをいろんな企業に提供していくっていうところを主体業務としてやっていく会社と定義づけています。もっと絞ると、フィードフォースでは、いわゆるメタデータを主に扱っている、そういうビジネスをやろうと決めています。


次代のビジネスとして大きな可能性を持つRSS

丹下:RSSというのは実際どのようなものですか?

塚田:RSSを説明するためには、XMLを知っていただかないといけないのですが。XMLというのは情報の形式というか記述の仕方のことで、HTMLは例えばh1等のタグを書いて、それをブラウザを通して人が見ればこれは何が書いてあるのかわかるようなページになるじゃないですか。
★ Dreamerのプロフィール
出身地 香川県高松市
生年月日 1968年
学歴 京都大学工学部土木工学科卒業

略歴 大手銀行で4年間勤務した後、1996年に(株)ルートコミュニケーションズを設立し、大手企業を中心にインターネットを使ったマーケティング支援を行う。加えて2006年にRSSフィードやメタデータを活用したマーケティングサービスを提供する(株)フィードフォースを設立。現在100社を超える企業にサービスを導入し、マーケティング支援を行っている。著作に「RSSマーケティングガイド」(インプレス刊)がある。
趣味
その他

☆ 会社概要
企業理念 Message Everywhere
社名 株式会社フィードフォース
代表者 塚田耕司
設立 2006年8月1日
住所 〒112-0002 東京都文京区小石川1-2-1 出光後楽園ビル5F
TEL 03-5840-7106 
FAX 03-5840-7107
URL http://www.feedforce.jp/
塚田:なので、HTMLというのは人が見ることが前提となっている記述の方式なんです。一方、XMLというのはそれを機械が認識できるようにした拡張の形式です。

丹下:面白いですね。

塚田:データに汎用性を持たせて自由にサーバー間で行き来させたときにハンドリングしやすいというのがXMLです。話が戻りますが、RSSというのはXMLのうちの一つの型なんです。RSSは何をするためのXMLかというと、これはRich Site Summaryの頭文字なんですけども、サイトのサマリーなので、サイトの概要を簡易にやりとりするためのXMLです。なので、ANAのサイトにどういう情報が書いてありますよというのが、このRSS情報の中に入っていると。一方エンドユーザーはRSSリーダーというものを使ってRSSを定期的に取りに行くんですね、取ってきてこの情報を最新のもの、最新のサマリーに更新されていれば、新しい情報に更新されたなというのを認識することができる。というのがそもそもRSSの考え方です。
RSSっていうのはサイトの更新情報を扱う規格ですが、僕らはそれに限らず例えば、アパレル業界のデータとか人材業界のデータとか旅行業界のデータというのを、扱うことができればいろんなことができるじゃないかと考えています。

丹下:簡単に、ポータルのようなものも作れますよね。

塚田:そうですね。ポータルもすごく簡単に作れます。XMLなどの構造化されたデータのことをメタデータというんですが、インターネットが始まって、基本的に最初はHTMLが中心で普及して、人が見てわかるデータだけど、機械が見ても判断できないというデータが今のところはほとんどです。


塚田:ですが、中長期的な視点で見るとそういう正規化されたデータ、構造化されたデータに移っていくことは間違いない。なぜならそのほうが再利用性が高くて色々なことに使えたりコストの削減になるんです。例えばいろんなデバイスで見たとき、PC見る時もケータイで見る時もそれぞれの特性にあわせて表示の仕方を変えなければならないじゃないですか。でもデータ自体がメタデータになっていればそれに外から表示方法をかぶせてあげるだけで、なんにでも使える。一つのデータ元があってそれぞれのデバイスに合わせた皮をかぶせてあげるだけで全部に使えます。すごくいいことが多いんです。それなのでインターネット上では構造化されてないデータから構造化されたデータへ移行していくという大きな流れがあって、その中で僕らはその構造化されたデータというのをいち早く技術的にも取り上げることによってこれから現れてくるビジネスチャンスを先んじて捉えていこうというのが実はフィードフォースの狙いなんですね。


トップダウンじゃない、ネットはボトムアップ

丹下:なるほど。僕のイメージだと、ドキュメントは紙なので再利用できない。でもエクセルデータかもしくはもっと進んだDBにすれば再利用できる。しかも誰でも利用出来てそのあとの付加価値が大きくなる、そんなイメージですよね?

塚田:そうですね。XMLというのは今まで歴史の変遷があって、例えば旅行業界のXMLを定義しましょうと言うときに、日本では大手のJTBが音頭を取ってツアーの情報はこれで書いてくださいっていうのをトップダウンで落とすわけですよ。けれどもトップダウンだと大体の場合普及しなくて、業界一位の会社がそうすると二位の会社が違う規格ぶつけてきたりするんです。
それなので今までXMLがトップダウン方式で上手く決まったことってあんまりないですね。逆にインターネットの思想ってボトムアップなんですよ。そもそもHTMLとかがすごい普及したのは簡単に記述できるし、多少の間違いは許しちゃう柔軟性があるからなんですね。
丹下:別に変数定義しなくていいような。

塚田:そう、例えばちょっとおかしい書き方をしていたとしてもまあ表示はされるっていう柔軟性があるがゆえにすごくボトムアップで広がったっていうのがあって。ネットって基本的にボトムアップじゃないと広がらないっていうのが分かっています。
例えばメタデータとか構造化されたデータというのもどうボトムアップで広めていくかというのが結構キーになってくるんですね。

丹下:塚田さんの会社は、なにかパーツを提供するという事業なんですか?

塚田:うちのRSS Suiteっていうのはもともとのウェブのデータから要素を抜き取って、RSSを自動生成するような機能を持ったツールなんですね。

丹下:自動生成ですか。

塚田:例えばANAが普通にウェブサイトを更新したら、RSSを自動的に生成するようなツールを出しています。RSSがそういう形でいろんなサイトに出されるようになると、まずはメタデータとしての第一歩を踏み出したって事で。理想はサイトサマリーとかじゃなくて、その中の全ての要素まで定義されていることです。例えばANAの飛行機の発着情報なんていうのも全部構造化されたデータとして取れて、それがANAだけじゃなくてJALなど全部取れたら、一番早くて一番安いのはどれっていうのもすぐできちゃう。理想はそこなんですが、でもいきなりそこにいくのはものすごく大変なので、まずその第一歩としてサイトサマリーを出しましょうというのをのを僕らは進めています。

丹下:ボトムアップだし。
塚田:そうそう。今はそれが全体の二割三割くらいまで来たっていう状況ですね。先は長いんですが、間違いなくそっちに行くことはわかっているのでそのタイミングそのタイミングでお金になることを全部やっていきましょうっていう考え方ですね。


情報配信と受け手のどちらをターゲティングするか?

丹下:企業側のニーズからすると、自社のHPを見て欲しいっていうのがニーズなんですよね?エンドユーザーがRSSリーダーをはってくれることが重要なんですか?

塚田:そうですね、それも結構僕らの中でいろいろ考えていたことです。マネタイズってエンドユーザー側のギリギリのところを抑えるか、企業側のギリギリを抑えるかのどっちかしかもうないんですよ。たとえばヤフーとかグーグルとかのポータル上に露出させて見てもらう、あとはPCにインストールされたツールのRSSリーダーとして接触するとか、ギリギリのところを抑えないと結局競争に勝てないんです。

丹下:ブログとかもありますよね。

塚田:そうですね、ユーザーの表示側を抑えるっていうのはものすごい競争になるんです。それこそヤフー、グーグルがコンペティターになるような話で戦わないといけなくて、そこはもう無理でしょうと。ではどこにポジショニングするかというと、この企業のギリギリの側を全部とって行こうっていうのを最初に戦略として立てて、なので僕らは企業の出している情報をRSSにして御社のサイトに貼ってください、その代わりその制作はソフトウェア使用料としていただきますと。ここでRSSを作りさえすればいろんなところを経由して最終的にはエンドユーザーのところに届きますよと。そういう話なんですね。だから僕らは基本的にはB2Bしかやらないと最初に決めたんですね。
丹下:すごいですね。確かにユーザー側はあんまりお金になんないですね。

塚田:お金にするのは大変ですね。

丹下:個人が払う形になるし。

塚田:なおかつ競争がすごく激しいです。


圧倒的なシェアを獲得し、次のステップへ

丹下:ヤフーとかブログ運営会社とかにユーザーを囲むために、RSSリーダーをOEM提供というのはありなんですか?

塚田:ありはありですね。ただそういうアプローチ、RSSリーダーを提供することを事業ドメインにして立ち上がった会社もいくつかあったんですが、もう全部なくなりました。

丹下:それはヤフーとかが自分でやっちゃうからですか。

塚田:そうです。勝負にならないです。技術上での差別化ということはないので。

丹下:なるほど。今フィードフォースさんが狙っている企業側に競合はいるんですか?

塚田:競合はほとんどいないですね。

丹下:いいですね。いま大手ばかり入ってますもんね。

塚田:今はそうですね。真似してくるところは何社かあったんですけども全部中途半端で。
丹下:仕事が取れないって感じですか?もともとのそのコネクションがなかったり。

塚田:そうですね。

丹下:なるほど、そうやってメタデータをボトムアップ的に広げていきましょうと。

塚田:いきながら、自分達のビジネスもいろんな局面で出てくると思うんですね。最初はRSSがスタート地点であればRSSを切り口としたビジネスはいくつか考えられますし、その先にRSSはそこそこ普及したので、ECに関連したメタデータを扱おうって決めたときに、今ECサイトで構造化できてないデータでそれを構造化することによってできることってまたいくつかあるじゃないですか。そこを全部ビジネスとしてやっていこうとか。

丹下:いいですね。なんかものすごいステップが見えますよね。例えばさっき言ったような価格比較サイトみたいなもの作りたくなるじゃないですか。で、それが出来始めると今度は構造化されたデータベースをもしかしたらフィードフォースさんが持ち始めて、帝国データバンクじゃないけども違う意味でのビジネスが何かできそうな気がしますよね。

塚田:そうですね。例えばいま口コミ情報がいろんなところに散らばっているじゃないですか。ああいうものに対しても一個一個に対してそれが何の口コミ情報なんだっていうものとか、ポジティブなのかネガティブなのかっていういろんなデータがそれに付随してつけられるようになれば、またそれはそれで集めてきてもともとの企業側の製品の情報とくっつけて出すっていうこともできますね。何でもできるんです。
丹下:面白いですね。例えば大手のウェブがあるじゃないですか。大手のウェブと一般サイトがあるじゃないですか。一般サイトはなかなかお金かけてRSSをつけることをしないじゃないですか。でも一般サイトがRSSをつけてくれると、データ全体の割合が変わると思うんですよ。これってどうしていくつもりですか?

塚田:これは、あまりお金を持っていないサイトは、CMS(コンテンツマネージメントシステム)という、管理画面から打ち込んでいくとページが作られていくコンテンツ管理ツールがあるんですよ。そういったものにもHTMLを書き出すと同時にRSSも書き出すような機能がついているんですね。なのでお金がないけど、多少わかるっていう人であればこういうものを使えば出せます。

丹下:そういう人たちはどうせ知ってほしいんだから、入れないといけないですよね。まあボトムアップ的に自分らでやれと。

塚田:そうですね、それこそホームページビルダーみたいなものと同じ感覚で。

丹下:いいですね、先が見えるビジネスですね。


新しいビジネスの見つけ方
~根本に立ち返って時代の大きな流れを読み取る~


丹下:最初のRSSとの出会いはどのようなものだったんですか?いろいろなビジネスを数打っていくうちに、出会ったんですか?
塚田:いえ、僕は原理主義者でそもそもの根本に立ち返って考える癖があるんです。ネットっていうのを、今後5年、10年のスパンで考えたときに、トレンドがどうなるのかっていうのがまずありきで、そのトレンドにのったものをやろうと思ったんですよ。で、そのトレンドでいうとキーワードがいくつかあがってくるじゃないですか。例えばモバイルでいう「ユビキタス」みたいな。そのなかのひとつが「メタデータ」であったり、もっと言うとメタデータの先に「セマンティックウェブ」っていう概念があるんです。それがもうはずせないトレンドとしてあります。そういう絞り込みから選んだということになります。

丹下:なるほど。じゃあもう場当たり的に何か試したというわけではなく、深い階層の中で考えておいて、それを今の現実的な路線で考えてどうしていくかと。

塚田:そうですね。ただメタデータとかセマンティックウェブっていうのはそれだけでもう広いわけですよ。いわゆるインターネットと言っているのと同じことですから。その中でどこをポジショニングするのかっていうのを考えました。僕はマネタイズをできない商売をあまりやるつもりはなくて。それなのでまずどこがお金になりそうかっていうことを考えると、やはりB2CじゃなくB2Bだろうと。じゃあB2Bでここ1,2年のスパンで考えたらどういうものかって、そういう考え方ですね。

丹下:やっぱりアメリカでそういうのはあったんですか?RSSの概念とか?

塚田:RSS自体はアメリカで、特にヤフーとかグーグルとかがこれから力入れてくよっていうのは記事としてありました。当時いわゆるBIG3と言われていたヤフー・グーグル・MSが前向きに取り組んでいく技術であれば、まあ普及はするでしょうと。RSSに関しては。


丹下:なるほど。

時代に合った新しい付加価値を作り上げていく

丹下:それでは、会社としての夢というと、何になるんでしょうか?

塚田:目指す方向性としてはフィードとかメタデータっていう何か新しい付加価値のサービスを作っていくということですね。

丹下:もうナンバー1だから、時代の流れはあると思うんですけど、時流に乗っていけばいいって感じですもんね。

塚田:いや、でもそこはわからないですよ。不連続なので。
塚田:また全然違う角度からアプローチがきてそれがメインストリームになる可能性も全然あるので、この業界は。

丹下:そうか、それは安堵できないですね。

塚田:そうですね。ただ大きい舵取りの方向として、南なのか北なのかっていうことで言うと、向かってる方向は間違ってないです。その先の細かいところはその都度修正しながら。

丹下:でも新しいことを産み出すってやりがいありますよね。

塚田:難易度は高いと思っていて、当たり前なんですけども。誰もやったことないことをやろうとしているわけなので。やる意義もあるし、やりがいもあるし。やれれば満足感もあるだろうと。


既存の会社のあり方自体に、変革を起こす

丹下:個人的な夢というのはありますか?

塚田:どうでしょうね。今のところはフィードフォース一本じゃないですかね。あと個人的にはこのことをやりながら、会社組織というか会社のあり方というものにもイノベーションを作って行きたいなあと思っています。いわゆる今会社と呼ばれているもののあり方が果たして100%正しいか、効率的か、社員と経営者の関係性がお互いベストであるか、というとそうではなく他の解がある気がするので、今の会社を器にしながら模索していきたいと思います。

丹下:いわゆる派遣会社って階層構造になっていて、トップに社長がいて言葉は悪いですけど部下の働きの上澄みを吸い取っているような構造になっていて。あれ昔ながらの工場モデルじゃないですか。
塚田:まさしく僕もそう思っています。結局工業が中心であった時代のモデルで、いかに効率的に働かせるかみたいな。ほぼ機械と同じでいかにロスをなくすかみたいな発想じゃないですか。でもそれって今は違うとおもうんですよね。

丹下:ちょっと違いますよね。そういう業界は今でもあると思いますけど。

塚田:そうなったときに、やっぱりゼロベースで考えていったほうがいいと思うんですよね。例えば労働規約にしても、会社を取り巻くいろんなものって前時代の会社を前提に作られたものがほとんどで、企業体系とか。なんかそうじゃなくて今の時代でのそれぞれの最適化ってどうなのってこともやりたいですね。

丹下:僕もそれは永遠の課題というか自然にしたいと思います。僕が考えているイメージは、上下関係のないとにかく得意分野で勝負しているプロのアスリートの集まりのような会社なんですよね。

塚田:一方でやっぱりそういう風に動ける方って少なくて、自分でコントロールしなくちゃいけないですよね。当然出来ない人もいて、そういう人に逆にこういうことを期待するのって難しい、酷じゃないですか。その辺も難しいですよね。

丹下:非常に共感します。本日はありがとうございました。

塚田:こちらこそ、ありがとうございました。






塚田社長との出会いは、大学のOB会だった。起業まもない私に、色々とアドバイスをして頂いた人生の先輩である。受託開発からサービス提供会社へ。まさに私が目指しているシナリオです。しかもそのインフラをすでに取っておられる。これまでも本当に御苦労は多かったと思うが、ビジネスの立ち上げ方がとてもスマートである。塚田さんの人柄からも、とても滲み出ている。尊敬する社長さんです。これほどまでにあふれ切ったインターネットという情報社会の中で、もしかしたらグーグルを超えるインデックス化の礎を創る会社になるのかも知れない。そんなパイオニアです。