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株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ


ゼロスタートコミュニケーションズ代表、山崎徳之。
あの世間を賑わせたライブドア事件の際、渦中の人物だった方である。
数々のIT企業を渡り歩き、経営者としても開発者としてもスペシャリストである彼は、いったいどんな社会の実現を思い描いて仕事をしているのだろう。

 

プロバイダ、データセンター、IP電話とインフラの虜に


丹下:早速ですが、会社としての夢をお聞かせください。

山崎:会社が大きくなりつつも、社員全員が朝起きた時に会社に来たいと思える状態にするのが、ひとつの夢ですね。一部でしたらあるとは思いますが、全員がそういう状態でいられること。すごく小さければ言えると思いますが、大きくしつつ全員がというのはなかなか難しいと思うので。

丹下:理想的な会社形体ですね。私も目指しています。話は変わりますが、御社の設立の経緯を教えて頂けますでしょうか?

山崎:今まで4社に勤めた後に、1回自分の会社をアメリカで始めて、ライブドア事件などでたたまざるを得なくなり、その後にもう1回始めたというのが今の会社です。やはり自分で自分の思ったように全部決められるには自分で会社を作ることが一番いいと思いました。

丹下:アメリカの会社はいつ頃作られたのですか?

山崎:2004年の3月からです。ライブドアに2000年に入って2003年末まで普通に働いていて、2003年度くらいから辞めてアメリカへ渡ろうと思ったのですが、技術系の役員は自分ひとりしかいなかったということもあり、非常勤というか社外でもいいからということで籍を残しつつ、渡米しました。その時の会社はIP電話事業です。業界自体に伸びがなかったので今はあまりやっていません。業界構造もありますし、携帯がすごく普及したということもあり、IP電話が安いとと言っても、安いから携帯よりそちらを使うというのはなかなか難しいですね。

丹下:アメリカに設立された背景はどのようなものですか?

山崎:2003年の頭ぐらいからずっと電話というものを研究して、そこからIP電話にシフトしていき、いろいろ研究や開発をしていました。当時でいうと、ほとんどの技術や、そういうことに長けている人材はアメリカのシリコンバレーに集中していたからです。そういうことをやっている知り合いが全員そこにいて、もう少し踏み込んでやっていくには、そこに行かないと駄目かなと思いました。この会社は後の2005年に日本の会社に譲渡しました。完全に譲渡が終わったのは2006年2月でした。ライブドア事件がありましたので、会社を閉じざるを得なくなり、日本に戻って社長に就任しました。2006年6月14日までライブドアの社長をやったのは役目として、けじめとしてやったということです。その次に自分のやりたいことをやるには、どこかへ就職するよりは、会社作るほうが良いかなと思いました。退任は事前に決まっていたので、今の会社を同年6月2日に設立しました。
★ Dreamerのプロフィール
出身地 長野県生まれ
生年月日 1971年
学歴 青山学院大学 理工学部卒
略歴 1995年4月 デジタルテクノロジー株式会社入社
1996年11月 株式会社アスキー入社
1997年10月 ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社入社
2000年5月  株式会社オン・ザ・エッヂ(現株式会社ライブドア)入社
2001年12月 株式会社オン・ザ・エッヂ(現株式会社ライブドア)取締役就任
2003年9月 米国にてRedsip.Inc.創業 代表取締役社長就任
2005年3月 プラネックスコミュニケーションズ株式会社取締役就任
趣味 仕事
その他 株式会社ライブドアの基幹となるデータセンターサービスである『データホテル』の立ち上げを成功させ、現在でもSIPなどの技術の第一人者として活躍。 技術評論社『Software Design』内で連載中。ライブドアポータルサイトの強固で安定したDB設計をリーズナブルに構築。

☆ 会社概要
企業理念
社名 株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ
代表者 山崎 徳之
設立 2006年6月
住所 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-23-17 ロフティ原宿8F
TEL 03-5468-5714(代表)
FAX 03-5468-5715
URL http://zero-start.jp/
Googleを超えるソーシャルインフラを構築


丹下:なるほど。激動の事業人生ですね。新しくやりたい事は決まっていたのですか?

山崎:業種に関してはITをベースにしました。インフラが好きで、プロバイダやでデータセンターをやっていて、IP電話は少しアプリケーションよりなところはありましたけど。その頃、mixiとかはまだ小さくて100万人とかそんなレベルの話でした。SNSはサービスですが、ソーシャルというのはインフラになるだろうと思ったので、今度はソーシャルというインフラをやってみようということで会社を作りました。以前はmixiとかGREEみたいなSNSをサービスとして使うばかりでしたが、その頃からECやニュースサイトですとか、そういうものにもソーシャル機能がサービスとしてではなくて基盤として入っていくだろうと思ったところがありました。ソーシャルは全部、貫くような基盤になると思い、その基盤の上にいろんなサイトが乗っかっていくようになるだろうと思いました。

丹下:なるほど、分かります。人間本来の本質はコミュニケーションにありますから。

山崎:今やろうとしていることは、さらに下のほうに潜ろうとしていて、ソーシャルインフラの一部ではありますが、もう少しその中でのインフラです。例えば機能的なソーシャルネットワークを作る云々よりもデータ解析やファイリングなど、そういうところに取り組みつつあります。どちらもインフラで、より概念的なインフラから、もう少し基盤的なインフラにシフトしています。何でもかんでもできないので、その辺りに焦点を当てています。ソーシャルというのは単一のソーシャルになると思っていて、サイトが何百とか何千とかあるにしても、それはひとつのソーシャルというインフラの上に乗るサービスであると。


山崎:ソーシャルインフラは今のメールシステムみたいなもので、ひとつのソーシャルというものがあり、そこにみんなが自分のアイデンティティやメールアドレス、今流行りのオープンiエリアなのか、何かわからないですが、自分を表すものを持ってそこに基盤があり、人間関係、趣味嗜好、基盤として保存されているもので、その上に立つ形でサイトがあるというようになっていくと思っています。今はまだサイトの中にそういう機関が個々にある状態で、基盤が連結してもう少しレイアウトして独立していくのであれば。

丹下:なるほど。

山崎:ネットにはもともと人間をユニークに表す方法があり、今だとメールが一番現実的で、それがもう少し明確な基盤として多くの人が認識するようになると、それは社会ですよね。マイニングをインフラとして提供して、そのデータを保有しつつ、データはうちのものでなくて、みんなのものになります。


山崎:しかし、その解析によって、仮にAが好きな人はBも好きな傾向が強いという暗黙的というか推察的な統計情報というのが出てくると思います。このようなものをマイニングしてあげると、そこに自分のプロフィールを溜めるだけで、潜在的な自分を浮かび上がらせたりとかができるのではとも思います。
ネットが社会基盤として不可欠になっていくという意味でいうと、やはりリアルにないものをというのが必要になると思います。今ネットにあるものはわりとリアルにあるものばかりで、例えばニュースが読める、ブログが書ける、物が買える、ソーシャル的な活動が出来るとか、全部出来ている状態です。今ネットにあってリアルに出来ないものは不特定多数に情報を発信するとかはなかなか出来ないですけど、あとはせいぜい早いとか安いとか、そういう違いだと思っています。個人の情報を蓄積し解析して、それによって個人の隠れた嗜好を見つけたり、社会構造を切ってあげたりするのはリアルにはないと思うので、ネットだからやりやすく行動も取りやすい。
山崎:そうなるとネットが1つのアプリケーションというよりは基盤として定着する要素があるというところがあります。TSUTAYAさんとかは、それをリアルでやろうとしていますけどね。Tカードがあちこちで使えるようになっていますが、決済がないところにも行動履歴は十分残るものなので、このカードの欠点は決済が発生しないかぎり使えないというところです。ただリアルな世界であそこまで、購買履歴を溜めていけているのはTカードが唯一だと思っています。CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)の野望としては全日本人の購買履歴を網羅することが目標らしいですね。

丹下:本当にインフラは面白いですね。弊社の夢でもあります。

山崎:そうですね。結局、首根っこを押さえられますから。

丹下:この事業に対して、どこか競合他社はあるのですか?

山崎:まだそんなに普及して根付いているものではないですから、Googleじゃないですかね。

丹下:いろんなアプリケーションを作っている会社に、これが出来るとビジネスの話になるのですか?

山崎:データと計算を委託するような会社にならないかなとは思っているんですよね。データを扱って計算を請け負うという意味のインフラに。

丹下:山崎様も開発に参加されたりするのですか?

山崎::研究開発でやることもありますし、請け負ったお仕事をやらせていただくこともあります。
山崎::開発のメンバーとしてやっていますよ。そういうわけで今日もこんな格好ですけど、5月決算ということもあり、2日に1回くらい泊まりでやっています。

誰から見ても役職・給与・評価が公平な会社づくり!


丹下:ハードですね!冒頭におっしゃっていただいたような、全員が朝起きて来たいと思えるような会社にするための秘訣はあるのでしょうか?

山崎::うちもまだまだ出来ていないですが、公平さですかね。誰から見ても役職が公平で、給与が公平で、評価が公平だったら、少なくともネガティブな面というのはなくなると思います。その上で会社の収益性があって取り組んでいることが面白ければ、そう思ってもらえると思っています。
丹下:社長様個人の夢をお聞かせ願えますか?

山崎::夢は常に成長することです。何かスキルが付くとか、出来ることが増えるとか、欠点が減るとかですね。スキルが伸びたり、習得したものが増えたり、出来なかったことが出来たりすると楽しいですから。

丹下:わかりました。本日はありがとうございました。

山崎:こちらこそありがとうございました。







 2006年のライブドア事件、激動の時代の中心におられた山崎さん。TVの向こうで見る姿とお会いした時の謙虚な姿はラップしそうで、まったくの別人に見えました。当日は開発で徹夜明けだったにも関わらず、紳士にご対応いただきました。ネットが登場して10数年。まだまだ生活に必要不可欠だとは言いきれないと僕も思っています。ただ、個人の経験知・趣味趣向・アイデンティティ等をもとにDB化されることで人間の生活を豊かにして行こうという取り組み。失礼ながらも、弊社が目指しているものとベクトルが全く一緒であるという事で、大変興味深く対談することが出来ました。ネット黎明期における戦国時代を生き抜いてこられた起業家が創る新しいインフラ。とても楽しみである。