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株式会社トラン

「タクシーを新たな物流のインフラに」
以前、とあるIPOコンサルティング会社の飲み会で、お会いした社長さんです。とても上品な方で、公認会計士という肩書も持っていらっしゃる敏腕経営者です。久し振りにお会いするという事で、取材を楽しみにして行きました。
 

タクシーは、サービスの質が低いほど、料金が高い仕組み

丹下:早速ですが、会社の夢からお願いします。

藤原:会社は、創業した時から、6ステップまでの事業計画を立てています。いま3ステップまでが達成されています。あと、3ステップを達成することが、会社としての夢です。

丹下:なるほど、凄く細かいステップがあるんですね。

藤原:「らくらくタクシー」という弊社のサービスがかなり色々な所で注目されていて伸びてきています。タクシーは手をあげて乗るとか、メーターで値段が決まるものとかあります。タクシー以外の一般的なサービスであれば、サービスの質が良くなければ料金は安いはずなんです。しかし、タクシーに関しては、例えば、初心者の運転手さんに当たってしまって、道がわからなくて遠回りしてしまい高くついてしまうという状況があります。結果的にサービスの質が低いほど料金が高いんですよ。それでも堂々と公共交通機関と謳っている。これはおかしいんじゃないかと思いますよね。

丹下:時々、私もそういったタクシー運転手さんに出会いますね。

藤原:初心者のタクシーの運転手なら練習のため半額だっていいじゃない。そういう仕組みを作っていきたいんですよね。プロの運転者なら高くてもいい。というね。そういうふうにサービス一生懸命良くしていけば、運転手の給料も良くなっていくと思うんですよね。

丹下:公共交通機関とは言え、サービス業ですものね。

★ Dreamerのプロフィール
出身地 東京都
生年月日 1951年
学歴 中央大学商学部卒
略歴 ケミカルバンク(現JPモルガン・チェース)、在イラク日本大使館、朝日監査法人(現あずさ監査法人)勤務を経て、会計事務所所長、などを経て、
2001年4月に?トランを設立し代表取締役に就任。
趣味 科学雑誌を読むこと、映画鑑賞、クッキング
その他 いつの日にか全国の温泉めぐりをすることが個人的な長期目標

☆ 会社概要
企業理念 タクシーを軸とした事業をとおして、地域社会を元気にする事を企業目標とします。
社名 株式会社トラン
代表者 藤原和江
設立 2001年4月
住所 〒162-0822 新宿区下宮比町2-14 飯田橋KSビル4F
TEL 03-3513-0491
FAX 03-3513-0492
URL http://www.rakurakutaxi.jp/


藤原:今だと、稼ぐ運転手さんは1000万円プレイヤーとかいますが、それは自分が流しているポジションをよく知っていて、稼いでいるというのがあります。

丹下:なるほどですね。年収1000万円の方というのは個人タクシーの方ですか?

藤原:いいえ、会社に勤めている方です。

丹下:会社に勤めていても年収1000万円行くなんてすごいですね。

藤原:弊社でおつきあいさせていただいている会社の一握りの方らしいのですが。

丹下:その人たちはノウハウ公開しないんですか?

藤原:そうみたいですね。

丹下:僕だったらその1000万プレイヤーにどんどんついていきますけどね。

藤原:そういう人がどんどん伸びていくんでしょうけどね。タクシーの会社では転職してくる人は、意欲がある人が少ない気がしますね。


600ものタクシー・バス会社が利用するサービス

丹下:なるほど。一時期はタクシーが増えすぎたというニュースがありましたが、今はどうなんですか?

藤原:都内に関しては法人もそこそこ調子が良いようですね。

丹下:そうなんですか。乗車率もいいんですか?

藤原:はい。ただ地方はあまり良くないようです。異業種からの参入が相次いだようで。

丹下:やはり参入がかなりあったんですね。

藤原:はい。もう落ち着いたようですけど。

丹下:でも御社のサービスで携帯電話でタクシーを呼ぶことができると、地方の方がうまくいきそうな気がしますね。

都内とかって道でタクシーが流しているので捕まえやすいんですが、仕事で地方に行くとタクシーは駅に行かないと無いんですよね。その時に「らくらくタクシー」みたいなサービスを知ってて、地方で使えますよとなったらものすごくいいですよ。

藤原:そうですよね。ただ地方は今のところ24時間後の配車なんですよ。都内は30分後なんですけど。私たちが全国を回ってシステムの使い方を教えていくことができればいいんですが。次にやらなければいけないことは、タクシーを全国どこでも30分で配車することができるようにすることです。

丹下:先ほど言われていた6ステップですが、具体的に教えて頂けますか?

藤原:そうですね。タクシー業界はわりと旧態的な護送船団方式のようなところがあって、とにかくすぐに言っても反応はしないので、少しずつステップを踏んでいこうとしています。

丹下:第1ステップ目はどのようなものなんですか?

藤原:電話・ファックスでタクシーの手配をするということです。

丹下:今でもこれは残っているんですか?

藤原:はい。今でもこれがメインです。対お客さんも少しはあるんですけど、ほとんどは旅行会社から注文をうけています。

丹下:旅行会社がツアーのときに使われるんですか?

藤原:そうですね。ツアーとか個人の旅行とか社員旅行とか修学旅行とかでバスやタクシーの手配をするというときに、うちだと全国どこでも手配が出来るので。全国600社と契約しています。

丹下:600のタクシー会社ですか?

藤原:タクシーとバスの会社をあわせて600です。

丹下:すごいですね。

藤原:それを元に、2番目のステップとしてインターネットを使うようになりました。

丹下:1番目の電話の窓口がインターネットになったということですね。

藤原:そうです。ただ、タクシー会社はインターネットの対応が遅れているので、全てをインターネットにシフトすることが出来ない状況です。600社のうちの200社くらいがインターネットです。

丹下:なるほど。第3ステップはどのようなものなんですか?

藤原:GPS携帯でタクシーを呼ぶことが出来るというものです。


人を運ぶタクシーから物を運び、地域の安全を提供するサービスへ発展させたい

丹下:現状はここまで来ているということですね。

藤原:それで第4ステップでマッチングが出来るようになりたいですね。おそらく3年先にはほとんどの携帯端末がGPSに変わっていくと思っています。例えばここから羽田空港に行くとしたら、私の携帯電話に「じゃあ15分後に○○タクシーの○○号車が来ます」という連絡が自動的にくる。こういうことをしていきたいですね。

丹下:なるほど。近くのタクシーと近くの人をマッチングするということですね。

藤原:それから第5ステップで、人以外の物も運べるようにしていければいいなと考えています。

丹下:確かにあれほど移動してますから人以外のものを運ぶというのも可能性があるかもしれませんね。



藤原:最後のステップはまだまだ先のことだとは思いますが、個人のお宅からタクシー会社に直通の連絡装置を設けて、タクシーを呼ぶだけでなく、買い物までしてきてもらうような仕組みにしていこうかと思っています。

丹下:なるほど。パシリテーションですね(笑)

藤原:そうですね(笑)こうなるとお年寄りだけの世帯でもなんとかなりますからね。

丹下:本当ですよね。

藤原:そういった人のつながりみたいなものをタクシーを通して構築していきたいですね。夜道を歩いていて怖いと思った時に、近くのタクシーが駆けつけてくれるような、地域の安全にも

貢献できるようなサービスにしていきたいですね。日本の治安も悪くなっていくという状態の中で、貢献することができるというのは、移動体としての特殊性があるからこそだと思っています。

丹下:話は変わりますが、僕は最近バスをよく使うんですね。そのバスを待っている時に何分後に来るかというのが分かるとすごく便利です。ですので、タクシーでも30分で配車するだけでなく、あとどれくらいで着くかが分かると凄く良いですね。

藤原:そうですよね。あと何分で到着するとかがわかるとお客様も満足度が上がると思います。最近のお客様アンケートでも同じことをおっしゃっているお客様がいらっしゃいました。

丹下:それが出来たら凄く便利だと思います。技術的には出来ると思いますけど。

藤原:そうですね。時間はかかるけど達成不可能ではないですよね。


個人の夢は、食堂のおばちゃん

丹下:個人的な夢というのはあるんですか?

藤原:この6ステップが全部完成したら、日本を良くしていきたいという気持ちがあります。具体的には、農業という切り口で何かをしていきたいなと思っています。つまり、農業共同体というようなものをビジネスベースに乗せることができないかと考えています。

丹下:今の事業とは全く違うアプローチですね。

藤原:北欧とかは経済成長しながらなおかつ社会保障がうまくいっているんですね。日本では社会保障は期待できないという状況があります。その中で何か法人として社会保障を取り入れた企業体としてなおかつ利益を生むような、そういう構図が描けないかと思っています。その中で私は食堂のおばちゃんをやりたいんです(笑)

丹下:そこですか(笑)

藤原:そういうフレームを作ったうえで、経営は全て他の人に任せて、私は食堂のおばちゃんをやります。

丹下:みんなが笑顔でご飯を食べてくれるっていう(笑)

藤原:そうそう(笑)「おいしいよ」って言われたらそれが一番嬉しいみたいなね。

丹下:ほっとする夢ですね。今日は取材、ありがとうございました。

藤原:こちらこそありがとうございました。




 個人の夢が、「給食のおばちゃん」というのには、驚いた。北米での社会保障と経済成長との両輪における成功は、経営者として学ぶことが多いです。じゃあ、日本で同じことが出来るのか。最近は、米を粉にして輸出する事業や、マグロの養殖が本格化してきたと注目されています。今まで資源を消費していただけですが、これからの日本は、資源を輸出することが出来るかも知れないですね。食の安全が取沙汰されて、紙面を賑わす事が多い昨今ですが、公認会計士兼、経営者兼、給食のおばちゃんという3足のわらじを履く藤原さんを見てみたいものだ。