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インベスター・ネットワークス株式会社

個人投資家に対する情報格差があり、株価が割安で放置されている。
 

丹下:早速ですが、会社としての夢をお聞かせ願えますでしょうか?

杉本:マザーズへの上場ということを計画していますが、上場することが夢ではなくて、スタート地点であると位置づけています。
資本主義が冷戦を経て今なお、世界の主導権を握っているわけですが、1600年代にヨーロッパの資産家がお金を出して作った東インド会社が株式会社の原点だと考えると、資本主義の原点になるわけですよね。

丹下:はい、そうですね。

杉本:東インド会社はお茶を作り、イギリスに輸入することで儲けていました。大きな船を作れば作るほど、多くのお金を稼ぐことができたわけです。逆に大きな船が沈没すれば大きなリスクを背負う事になります。
1人の人間がそのリスクを負うのではなく、分散するという事で株式会社という仕組みが出来たのです。毎年、資産家にバックする仕組み、今でいう株式の配当の発想が出来たのです。
当時は、イギリスとインドはものすごく距離が遠く、今のような通信手段もないので、全然状況がわからない。結果を待つしかなかったわけです。投資しているお金は天候や作物のでき具合によりペイバックされる配当の差がでるわけで、資本家は現地の状況を知りたいと思うはずですよね。
要するに株式投資する人たちはその会社の成長性、リスク、経営者の発想、経営能力、色んな情報が欲しいわけです。情報があって初めて、お金をどれくらい出そうかと発想する。

丹下:はい。

杉本:インターネットが出現してから投資家と発行体との距離が格段に縮まりました。これから資金調達のボーダレス化、国境を越えて投資先が大きく広がっていくフェーズに入ってくると思います。
今、例えば日本という国だけを見ると情報格差があります。何の格差かというと、日本の企業はものすごくいいポテンシャル、いいファンダメンタルズを持っているのに、株価が割安に放置されている企業がたくさんあります。それは投資家に情報が行き渡っていないからです。
一方でメディア戦略だけがうまく、テレビの露出が高いベンチャー企業の社長などは、実態は知られておらず知名度だけに投資され、実態とはかけ離れた株価がつき、何かスキャンダルが起こると一気に株価が暴落するなど、いびつな資本市場になっています。ところが、地方には毎年、確実に利益を出し確実に成長している会社があります。こういう会社は実態よりも株価が割安になっているケースが多々あり、このような情報をプロのアナリストはある程度調べているので、プロのファンドマネージャーには銘柄を発掘していける土壌があるといえばあります。
個人投資家はプロとは情報格差があり、楽天には投資するが、他の地方の知らない会社には投資できないという話になるわけです。

★ Dreamerのプロフィール
出身地 奈良県宇陀市
生年月日 昭和41年4月29日
学歴 同志社大学商学部卒
略歴 株式会社リクルートコスモス、株式会社インテリジェンスを経て、株式会社アイアール・ジャパンに入社。その後、株式会社ストラテジック・アイアールの経営に参画。2001年合併による新会社ジ-・アイアール・コーポレーション?取締役に就任。2004年10月、インベスター・ネットワークス?を設立し代表取締役社長に就任。
趣味 映画鑑賞、ビリヤード
その他

☆ 会社概要
企業理念 激変するグローバル資本市場、IRナビは、企業と資本市場を結ぶ架け橋として、戦略的な投資家マーケティング活動をサポートします。
社名 インベスター・ネットワークス株式会社
代表者 杉本 光生
設立 2004年10月18日
住所 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-3-9
TEL 03-5774-0822
FAX 03-5774-0821
URL http://www.inv-net.co.jp/


丹下:そうですよね。

杉本:我々がインターネットを使い、いい会社にいい資金が集まる、そういうインフラを作りたいというのが原点なんです。
資本主義の効率化を図ることにより人類そのものがもっとハッピーになればいいなということなんです。


日本の製造業の平均株価収益率は、実力値の1/2

丹下:そのための手段として、2010年に上場という通過地点があるわけですね。

杉本:はい。それには、まず国内での情報ギャップを埋めることが、第1フェーズだと考えています。日本の個人投資家の金融資産は1500兆円と言われています。
資金が遊んでいる国は日本ぐらいなので、世界の人達から見れば、何てバカなのだろうと映っていてもおかしくない。1500兆円も寝かしておくのだったら、もっと優良な企業に投資すればいいわけです。
現在、日本の製造業の平均株価収益率は16.7倍なので、すごく下がってきています。ところが1989年、バブルが崩壊した年に最大瞬間風速で日経平均が39,000円をつけた時期もあります。これは日本が絶頂の時で、当時40,000円は突破するだろうと言われましたが、バブルが弾けて一気に日本経済は落ちていくわけです。

丹下:凄い時代でしたね。

杉本:日本企業に実力からすれば、私の感覚値だと平均株価収益率は25倍くらいが良い線かなと思っているので、1989年の60倍という数字は、いかに実態のないものが乗っかっていたのかと思います。

丹下:そういう意味では、現在の平均株価収益率は低いですね。

杉本:現在の16.7倍というのは歴史的に見てもこんなに安い局面はなく、安すぎるのは、本当の企業の実力や投資魅力がマーケットに伝わっていないということです。個人マネーがこういったところへ向いてくれば、日本企業はもっと競争力を取り戻すはずです。今でも世界で屈指の技術力を持つと言われており、この技術力にもっとお金が投資されれば、日本企業はもう1度、世界のリーダーに返り咲ける力を持っていますし、上位に食い込むことは出来るはずだと思っています。国内の活性化、そこをまずやり、土壌を作りたいです。


国内4,000名、海外30,000名の機関投資家に直接アピール

丹下:なるほど、その為に御社のIRナビというサービスがあるんですね。

杉本:IRナビには国内のファンドマネージャーとアナリストの約4,000名分の名前、電話番号、Eメールアドレスが搭載されています。この4,000名にシステム上からニュースリリースの配信、投資家向けの案内状の送付と、様々なアプローチができる仕組みになっています。
海外では約30,000名、カバーしている地域は北米、欧州、シンガポール、香港、オセアニア地域、南アフリカまで全世界の機関投資家へリーチをかけられる仕組みです。

丹下:凄い数の機関投資家ですね。投資して欲しい企業にはメリットが大きいですね。

杉本:今、上場企業を200社くらい扱っています。今まで日本企業が海外や国内の機関投資家にアプローチをするには、証券会社に頼るしかありませんでした。
全部任せるより、自分たちで行いたいという企業が弊社のシステムをどんどん取り入れています。

丹下:なるほど、他の証券会社との違いは何ですか?

杉本:分析力が高いことが証券会社との違いです。機関投資家がある企業の株をどれくらい持っているかを閲覧でき、敵対的買収防衛のワンツールとして入れる企業もあります。データーベースが自由に使える機能、スケジューラー機能など、ファンクションがいくつもあります。
例えば投資家とのMTGを入れておけば、そこからメール配信、履歴管理、履歴として議事面の記録、一連の作業が全部できるファンクションも備えています。
時間とコストをかければ同じ情報は手に入りますが、ともに膨大な量が必要なので、年間手数料が250万円なら買おうという話になるのだと思います。今は月に10社以上のペースで新規が増えています。

3度目のチャンスで、満を持して独立。資本金4500万円は直ぐに集まった。

丹下:凄い勢いで伸びていますね。ところで、どういったきっかけで独立されたんですか?

杉本:もともと将来、独立するためにリクルートコスモスに入社しました。当時、バブルが崩壊して一旦、退社しました。
その後、ベンチャーに興味があり、先輩の会社である、当時はまだ10数人で小さかったインテリジェンスに入りました。
後にIR会社に入り、この業界にきて17,8年経ちます。



丹下:その間にも起業したいという想いがあったのですか?

杉本:はい、その間に独立の誘いがいくつかありました。その頃は、散々、辛そうな経営者という仕事を側で見てきて、今のポジションが楽なので、独立しようという思いは冷めていました。

ところが2003,4年に色々な機会がありました。
同業他社の役員をしていた方からの出資の申し出や他社から役員へのスカウト、IR担当役員のポストなど、いくつかお話がありました。人生の岐路だと思い、そういうチャンスが3回目でしたので、考えに考え、この機会を逃したら一生サラリーマンだろうと。

丹下:色々と迷う選択肢ですね。

杉本: 一念発起して独立しようと、様々な人に話をしたら、ようやくその気になったのかと言われ、自分で言うのも変ですが、満を持してみたいな形で独立しました。独立資金は、すぐに4500万円ぐらい集まりました。それだけ期待もされていましたから、失敗も出来ないですし、事業計画は相当、綿密に作り、3フェーズを考えました。


3年で4億円の売り上げ、毎年倍々の伸び

丹下:第1フェーズから教えて下さい。

杉本:第1フェーズはローリスク、ローリターン。
せっかく出していただいた金を無駄にするわけにはいかないので、以前から行っていたアニュアルレポートとコンサルティングを。これは初期投資が必要なく、自分のクライアントリレーションと頭だけで勝負できるので、ここからスタートしました。

丹下:杉本さんのご経験なら、確かにローリスクですね。

杉本:以前からお付き合いのあった企業10社ぐらいから、提案して欲しいという依頼がありました。
1年目は難なく1億3000万円ぐらいの売り上げを作りました。営業利益で3000万ぐらいは出せると予想できたので、出た利益でBtoBのASPの開発に着手しました。

丹下:第2フェーズへの投資ですか?

杉本:はい。最初からシステム開発に投資するベンチャーは失敗するとう反面教師をいっぱい見ていたので、自前で余裕の出た利益でシステムを作ろうという計画を立てました。得た利益を全部、システム投資に入れ、作ったものがIRナビです。

丹下:なるほど。勇気のいる投資ですね。当初から上手く行ったのですか?

杉本:半年ぐらいは売れず、すごく苦労した時期がありました。6ヶ月目ぐらいで売れ出して、今は200社ぐらいになります。初年度100社を超えた時点で利益が出てきました。

丹下:苦労はされたかも知れませんが、計画通りですね。

杉本:第1、第2フェーズで得た利益を次のフェーズの投資に回すという計画を立ててスタートしたので、この利益でもって第3フェーズの株なびを作りました。

丹下:これも順調に進んでいるのですか?

杉本:いいえ。ここにきて苦戦しているのは、計画通りに、会員を増やせていないことです。ここの梃入れをしなければいけない状況ですが、あまり計画通りにいっても面白くないので、これぐらいはいいかなと、笑。

丹下:勝者のなせる余裕ですね、笑。

杉本:今のところ1年目が1億3000万、2期目の売上げが2億、去年は4億の売上げで、だいたい倍になっていますし。

第3フェーズの次はグローバルな世界で挑戦

丹下:そうしますと、国内でのギャップを埋めたあとは海外ですか?

杉本:国内のマーケットの活性化後は、国境を越えるということになりますね。
資本主義の歴史を見ると、分かりやすいのは半導体ビジネスで、これはもともと先進国、特に欧米でスタートしたものです。1960年代までは、アメリカ市場。1970年から1980年にかけ、日本は安い労働資本でもって技術が上がってきたので半導体を大量生産できるようになりました。アメリカが沈んで、日本は1980年代にトップに立ちます。米国は、半導体で負けて、何をやりだしたかというと、CPUを作り出したんです。
CPUというと、インテルを代表するような頭脳部分で勝負しようとなってきます。
1990年代になり、ものすごい勢いで韓国勢が伸びてきて、サムスン電子などが強くなり、半導体のシェアはどんどんアジアにシフトしてきました。
その都度、投資マネーは成長するところに流れるので、バブルの頂点までは世界の投資マネーが日本に集まったわけです。これが今はBRICS諸国、インド、中国、ブラジル、ロシアに流れています。

丹下:株式市場も同じような事が起きるという事ですか?

杉本:個人マネーでは、直接投資は情報が少なく、なかなか国境を越えにくいわけですが、海外株を組み込んでいる投資信託は買ってもいいかなという流れはできています。

丹下:なるほど。個人の目が海外に少しずつ向けられてきたんですね。

杉本:今後は中国企業やインド企業、日本でいうマザーズ上場ぐらいの、まだまだこれから急成長する可能性のある企業情報をネットで全部検索できるようにしたいです。

丹下:凄い構想ですね。

杉本:例えばそれは日本語や各国語で中国の新興市場、その中で半導体、ゲームソフトとかを入力すれば、そのカテゴリーにマッチした銘柄だけを引っ張り出してきて、その社名をクリックすると経営者のプロフィールや今何をやっているか、事業プラン、ビジネスモデルなど、全部解説された情報を調べることができる。情報が入ってくると、グローバル間の個人マネーは国境を越えて様々な市場へ流れるので、資本主義はもっと活性化するはずです。

丹下:その構想を実現するためには何が必要なのですか?

杉本:この構想にはまとまったお金、やはり何10億、何100億というお金がかかると思っていますので、口で言うほど簡単ではないですが。

丹下:個人の夢は会社の夢と近いですか?

杉本:近いですね。結局、私生活も何もかも賭けてやっているわけで、自分の夢イコール会社の夢ということになります。

丹下:なるほど、今日はお忙しい中、取材ありがとうございました。

杉本:こちらこそ、ありがとうございました。



正直、株式市場についての知識など、あまり無い中で取材させて頂いたが、非常に分かり易く夢を語って頂いた。日本の製造業における平均株価収益率が、16.7倍だというのは驚きだった。現状の株式市場がいかに情報の格差があるかという現れだ。株式市場というと、非常に不透明な部分があるように、素人からは見えるが、杉本社長自身、非常に論理的で、無駄のないお話をされる。こういったまっすぐな経営者こそ、次代のIR業界に変革をもたらすのだろう。