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プロインラインスケーター

「世界選手権に出場し、優勝する」
早稲田から大手広告代理店に入社後、自分の夢を捨てきれず、サラリーマンを辞めアスリートの世界に挑戦した男がいた。インラインスケート元日本代表選手の戸取さんだ。小学校の時に、たまたま滑ったローラースケートに魅了され、インラインの世界に。そのままインラインの世界にはまった少年は、いまや日本のインラインスケート界を代表するまでになった。
 

日本代表の選考漏れをした悔しさをバネに

丹下:選手としての夢を教えていただけますか?

戸取:夢と言うよりも、目標になってしまうんですが、世界選手権に出場し勝つことです。

丹下:勝つというのは優勝するということですか?

戸取:そうです。2008年4月にあった全日本選手権では失敗したなっていうのがありました。総合4位に入れば、日本代表に入れると考えていたんです。最後のレースで私ともう1選手が、同率5位に並んでいました。その選手よりも良い順位になれば、総合4位に入ることができ、日本代表に選ばれるというのが頭にありました。そのレースで1位を狙っていかなかったんです。私の方が順位が良かったのですが、代表に選ばれたのはもう1人の選手でした。その選手は他の種目で1位を取っていたんです。代表選考落ちしてやはり悔しかったですね。1位を狙っていかないと絶対に勝てない。

丹下:なるほど。私は素人なので良く分からないのですが、私の考えでは、「全部1位狙えばいいじゃない。」っていう気持ちになっちゃうんですよ(笑)それは違うんですか?

戸取:そうですね。それが1番ベストです。

丹下:1日の中でレースがたくさんあるからペース配分を考えていかないといけないんですかね?

戸取:考えなければいけない部分ももちろんあります。ただ、戦略的に考えるというのは結局弱さなんですよね。

丹下:あー、なるほどですね。

★ Dreamerのプロフィール
出身地 東京都
生年月日 1981年
学歴
略歴 6才から本格的にローラースケートを始め、数々の地区大会・都大会で優勝。
2001年全日本選手権2部総合優勝。
早稲田大学卒業後、就職・引退するも退職して復帰。
2007年アジアローラースケートマラソン7位(日本人最高位)。
2008年全日本選手権1部総合4位。
文京区ローラースポーツ連盟理事。
東京都ローラースポーツ連盟スピード専門委員。
後進の育成にも力を入れつつ、世界へのさらなる飛躍を目指す。
趣味
その他

☆ 会社概要
企業理念
社名 プロインラインスケーター
代表者 戸取大樹
設立
住所
TEL
FAX
URL http://www.skatenote.com/


戸取:次からは1位を狙っていかなければなと思っています。応援をしていただいているので、下手な成績を残せないというのもあります。甘えた考えというか、逃げ道を持っていたのがいけなかった。

丹下:1位を狙うよりは、3位や4位を目指してしまおうとしたんですね。

戸取:入賞を狙おうとしたんですね。それが今回の反省点です。


アジアでは韓国がトップ、日本はインライン後進国

丹下:話は変わりますが、スケートの世界ってどんな国が強いんですか?
戸取:アジアでは韓国ですね。韓国は世界のトップ選手を何人も輩出しています。あとは、台湾や中国も結構出てきています。ヨーロッパではイタリアやスペイン、フランス。あと強いのは南米です。コロンビアとか。南米から世界チャンピオンが何人も出ていますね。

丹下:コロンビアはめずらしいですね。スポーツで南米というと、ブラジルやアルゼンチンを思い浮かべてしまいます。

戸取:あっでもアルゼンチンなんかにも強い選手はいますよ。南米は全体的に強いです。

丹下:アフリカ大陸はいないんですか?

戸取:アフリカは聞いたことありませんね。

丹下:寒い国ならスケートをきっかけに始める選手もいるでしょうけど。

戸取:あとは道路の整備状況もあるでしょうね。

丹下:なるほど。世界選手権はいつ行われるんですか?

戸取:今年は9月ですね。

丹下:どこで行われるんですか?

戸取:スペインのヒホンという街で行われます。

丹下:各国何人くらい出場するんですか?

戸取:国によってちがいますね。韓国とかは10人から20人くらい出場します。
丹下:えー、多いですね。

戸取:日本ももっと出してくれればいいのにとは少し思いますけどね。

丹下:その人数は国が決めるんですか?

戸取:はい。

丹下:だったら一杯だしてもいいじゃないって思いますね(笑)

戸取:そうですね。ある程度上限はあると思うんですけど。

丹下:なるほど。では、戸取さんの夢は、この世界選手権に出場して優勝する。

戸取:そうです。


大学3年の時に、全日本選手権で総合優勝

丹下:ところで、なぜインラインをやり始めたのですか?

戸取:初めは、兄がしていたのに付いて行っただけなんですよ。兄と大学生くらいの時まで一緒にやっていたんです。ローラーホッケーとスピードスケートを一緒にやっていました。スケートをやっているというとそれだけで友達に不思議がって見られたりして、それが気持よくてスケートを続けてきた面もあります。

丹下:なるほど(笑)

戸取:中学生くらいの時に、今までローラースケート(4つタイヤが平行に並んだタイプ)だったのがインラインスケート(タイヤが縦一列に並んだタイプ)になったんです。

当然少し違う走り方をします。僕にはそれが結構あっていたらしくて、中学生になってインラインをはいてから、急にスピードスケートが速くなって、面白くなったんですね。

丹下:あれ?いける?みたいな感じですか?

戸取:そうです(笑)。ただそれまではそんなに本気ではしていませんでした。早稲田大学に入ってから、自転車を始めよう思って、大学の自転車部にはいりました。そのころ、テレビでツール・ド・フランスとか見て、「ああ、いいなぁ」と思っていました。それで、自転車だけを半年くらい続けた時に、なんか違うなと思いました。やっぱりやりたいことってインラインスケートだなぁと思いました。逆に離れた方がスケートの面白さが見えてきたんですね。

丹下:大学時代の成績はどうだったんですか?

戸取:大学時代は、全日本のローラースケートスピード選手権大会の2部(全日本はレベルで2つに分かれている)で総合優勝したんですよ。



丹下:おーすごいですね。早稲田大学が強いんですか?

戸取:いや、専修大学です。

丹下:それでも優勝してしまったんですね。

戸取:はい。そこら辺が僕のターニングポイントになっています。それまで週1回とか2回くらいしかやっていなかったのが、大学で優勝して、他のチームの練習にも参加するようになって、大学3年4年のあたりは毎日練習していました。今まで全日本では全然絡めなかったのが、日本のトップに絡めるようになりはじめました。


大学時代のやり残しを忘れる事が出来ず、サラリーマンを退職しアスリートの世界へ


丹下:なるほど。大学生のころは、気合い入れて頑張っていていたけど、一度就職されたんですよね?

戸取:はい。大手広告代理店の製作会社に入社しました。

丹下:どのくらいいらっしゃったんですか?

戸取:1年半ですね。あの頃は結構働いていましたね。

丹下:あっそうなんですか?

戸取:はい。深夜2時3時までは。

丹下:その会社で1年半働いて、転機があったんですか?

戸取:そもそもやり残したことがあったんですね。大学時代。大学は実は5年までいたんですが、5年の時に、代表選考会というのがあって、それが卒業する直前の2月にありました。そこで5位までにはいれば代表に入れるというのがありました。
途中まで5位だったんですが、最後に転んでしまって代表に入ることができなかったんです。たぶんそこで入っていたら、スケートはおしまいになっていたのでしょう。ただ、入れそうなところで入ることができなくて、そのまま就職が決まっていたので働き始めました。
このままだと結局何も残っていないな。何も形に残っていないなという思いがありました。このままずっと悔み続けていくのかなぁ。と思って仕事をしていました。


辞めて半年でインラインのアジアマラソンで、日本代表選手に

丹下:それで、1年半勤めて辞められたということですね?

戸取:はい。

丹下:辞めてから、2007年と2008年にチャレンジしたんですね?

戸取:そうですね。2006年の秋口に仕事を辞めて、トレーニングを始めました。そして、2007年の1月に国内のインラインのマラソン大会に出場しました。これがアジアマラソンの代表選手選考会を兼ねていました。そこで4位にはいり、アジアマラソンの日本代表に選ばれました。

丹下:秋に退社して、1月にマラソンに間に合わせるなんてすごいですね。

戸取:間に合わないと思っていたのでかなりきつい練習をしていました。毎日60kmくらい走ったり。

丹下:感覚ってすぐ戻るものなんですか?

戸取:戻らないですね。ようやく最近戻ってきたかなと思ってます。

丹下:やはり1年半くらいかかるんですね。やっぱそうですよね。アスリートですものね。

戸取:そうですね。それで、アジアマラソンは2007年の6月に開かれたんですが、結果は7位入賞と健闘できました。

丹下:アジアで、ですよね?すごいですね。

戸取:日本人では最高位でした。

丹下:すごい!マラソンって何キロ走るんですかですか?

戸取:42.195kmです。

丹下:へぇー一、般的なマラソンと変わらないんですね。インラインだと何分くらいでいってしまうんですか?

戸取:1時間前後ですね。世界記録は50分くらいです。

丹下:なるほど。時速40キロくらいなんですね。

戸取:途中で駆け引きもあるので速くなったり遅くなったりしますけどね。


インラインスケート選手に皆が憧れるような、文化を創りたい

丹下:今までは選手としての夢を聞いてきましたが、個人の夢もあるんですか?

戸取:今、現状の日本におけるスケートの環境が、僕にとって理想とするところではないんですね。例えば、街中を走っていたら警察に注意されたりとか、知名度も低い。

丹下:そうですね。

戸取:昨年、オランダに行った時に感じたのは、インラインスケーターが尊敬される存在なんです。

丹下:そういう文化がきちんと出来ているんですね。

戸取:そうです。そういう文化を作るためにどうすればいいかというと、まずインラインスケートを正しく一般の人に浸透させること、あとはスケートがスポーツだということをちゃんと認識してもらう。その上で、スケーターが尊敬される社会にしたいと思っています。

丹下:なるほど。

戸取:オランダに行くと、街中は普通に滑ることができるんですよ。逆に自転車やスケート用のレーンがあったりする。例えば日本でスケートや自転車の専用レーンを作ってもらうように動いたり、他には都内で神宮外苑とか目立つ所でちゃんとした大会を開催したいですね。

丹下:そうですよね。ヨーロッパって文化があるから、特に自転車とかって異様な人気ですものね。

戸取:自転車選手であれば、それだけで尊敬される存在ですからね。

丹下:自転車レースって賞金とかすごいんですか?あの黄色いジャージは知っているんですが。

戸取:「マイヨ・ジョーヌ」ですね。あれだけではなく、賞金もありますよ。プロの賞金レースですから。

丹下:あとはバイクも有名ですよね。

戸取:モトGPとか有名ですね。

丹下:これは圧倒的に人気ですよね。

戸取:そうですね。そうやって、スケート選手になることが、尊敬されるような社会を作りたいですね。これが個人的な夢になりますね。そういうのを少しずつ行動していくことが、文化を醸成していくことにつながると思っています。

丹下:どのくらいのスパンでみていく予定ですか?

戸取:やはり10年くらいはかかると見ています。



 インラインスケートの選手とは思えないほど、細い体を持つ選手です。どこからそんな体力が出てくるのかわからない程、長距離が得意なアスリートです。有名大学を出て、大手広告代理店に入社するも、夢を諦められず、24歳で競技者生活に転向。実は可愛い奥様もいらっしゃり、専業主夫とアスリートと2足のワラジを履いて日々練習に励んでいらっしゃる好青年。マイナーなスポーツとは言え、オーバルコースを走るレースは、競輪さながら頭脳戦のような駆け引きを楽しめるスポーツです。市街地を気にせず走れるようになること、優秀な解説者が出てくる事、何よりもカリスマのような選手がこの競技に出てくる事が、人気が出るかどうかのキーになる気がする。そのキーマンが戸取大樹なのかも知れない。